ともだち
2020.1
Green café essay vol99
「ともだち」
今年、シンガーソングライターの友達に再会することができました。もう何年会っていなかったのか、いくら考えても思い出せないほど、2人の間には長い時間の空白がありました。
音楽の仕事を始めたばかりの20代の頃に友達になって、お互いのアパートに行き来しては、愚痴を言い、不安を語り、慰めあっていました。でも、彼女にも私にも、いろいろなことがあって、だんだんと遠くなっていきました。決して彼女のことが嫌いになったのではなく、傷ついた彼女に、どう声をかけて、どう寄り添ったらいいのか、わからなかったのです。そして、私もいろいろな壁にぶつかり、すっかり自信を無くして、才能豊かな人に嫉妬したりして、いつも気持ちが苦しくて余裕がなかった…。それからというもの、友達として彼女に何もできなかったという後悔がいつも私の心の隅にありました。
今年、突然彼女から「今、幸代ちゃんのCDを聞いています」という短いメールが届き、「会いに行くよ!」とすぐに返信しました。彼女は、故郷に戻ってからもずっと曲を書いて歌い続けてきたのです。再会を果たし、彼女の新曲の編曲をさせてもらうことになり、それが昨日完成しました。聞いてくれた彼女は、電話口で涙を流して「ありがとう」と言ってくれました。空白の時間を超えて私の人生から離れずにいてくれた彼女。
「こんな私だけど友達でいてね、これから。」
人生の中で出逢う大切な人に、この年齢になってようやく、その思いを素直に伝えられそうです。
文・中村幸代