袖擦り合うも多生の縁
2018.5
文:中村幸代
縁とは不思議なものです。数年前のことですが、たまたま手を挙げて乗車したタクシーの運転手さんに「お客さん、前にも乗せたことあるよ。確か目黒あたりから乗ったよね?」と言われたことがあります。滅多にタクシーに乗らない自分が、数多あるタクシーの中の一台に2回も出逢うなんて。運転手さんも私も若かったら「もしかして運命の人!?」なんてドキドキしていたかもしれません(笑)。
数ヶ月前、都内の駅ビルで友人にネックレスを買いました。お店の人が言うには、ある作家さんが手作りしている一点モノだそう。どんな作家さんがどんな思いで作ったのかな、、、と一瞬思いましたが、もうすっかり過去のことになって忘れていました。
そして今日、別の駅ビルで似たネックレスを見つけて「あの時のネックレスに似てるな」と。すると声をかけてくれる人がいました。
「私が1つ1つ作りました、良かったらお試しください」
あの時、お店の人が言っていた作家さんて、この人!?
数ヶ月前に、ある駅ビルで購入したことを話すと、「あなたが買ってくださったんですね!売れていて喜んでいたのですよ!」そして「あなたが作った方なんですね!どんな方が作ったのかなと思いましたよ」と。
たまたま繋がった縁に、お互いに不思議な喜びを感じました。彼女は興奮気味に新作の説明やこだわり、おススメのお品などを紹介してくださり、生き生きと真心をこめて手作りされていることがよくわかりました。友人に良いプレゼントが出来て良かったなと思いながら、自分にもひとつ、彼女おススメのロングネックレスを買わせていただきました。お揃いのイヤリングのサービス付きで。
どこでどんな風に人と人が出会うのか、わからないものですね。『袖擦り合うも多生の縁』とは、たまたますれ違う人でさえ、前世で縁があった人だから、大切にしなさいということ。
果たして、運転手さんや、アクセサリー作家さん、前世でどんなご縁だったのやら。
文・中村幸代