記憶力が欲しい
2019.3
文:中村幸代
顔は覚えているのに、名前が出てこない。
これは年齢のせいではなく、脳の働く部位の違いによるものであるから、若い人でも起こりうることなのだとか。
自分の記憶力に自信が持てない私にとって、一筋の光のような話ですが、思い出せないのは人の名前だけではないのです。それはお母さん達(ママ友)との会話で顕著。
「〇〇ちゃんの遠足どこだったの?」と娘の去年の遠足の行き先を不意に尋ねられて、どこだったっけ?と必死に脳内を探るものの一向に出てこない。もう1人の同じ学年のママさんが、「鎌倉だよね。」と助け舟。「そうだった、そうだった。」ホッとした私に追い討ちをかけるように「そうなんだー。お兄ちゃんの時は?」「え?お兄ちゃん?・・・って、なん年前よ?えっと…。」
もうダメだ。思い出せないどころか、脳内リサーチが自動停止。
「ごめん。忘れちゃった。」その後の会話も、習い事の発表会の日程が、いつだとか、学校行事の話題。全く私の頭に入っていない情報のやりとりだったので、ひたすら存在感を消して、虚しく微笑んでおりました。
「忙しいから」という言い訳をしてしまえば気が楽になりますが、こんな私にも小学校PTAのお役はオートマチックに回ってくるのです。今年も。このままでは、ママ友の信頼を欠いてしまう。しっかりしなきゃ。
夕食の時、息子本人に聞いてみました。「5年生の時の遠足、どこ行ったんだっけ?」息子の返事は「遠足?そんなの、覚えてるわけないじゃん!」以上。
この親にして、この息子、であります。
文・中村幸代