明日は今日より…
2019.2
文:中村幸代
今年の始めに、スペインの建築家ガウディについての番組を見て、とても感動しました。これまで写真で建築中のサグラダファミリアを何度か目にしましたが、長年『サクラダ 』だと名前を勘違いしていたほど、浅い知識しかなかったのでした。
初めて目にした内部の映像は、建築物の概念を超えた美しい色と光と形にあふれていて「いつか、この空間に身を置きたい!」と強く思いました。
天才と呼ばれる創造者は時として、近寄り難く変わり者という見られ方をします。この番組を見るまでは、ガウディもそんな人物かと思っていました。ガウディは晩年、財産を施設に寄付して自分は貧しい身なりでいたと。そのために路面電車に轢かれた最後の時、周囲の人はすぐにそれがガウディだとは気付けず手当が遅れ、数日後に亡くなったといわれています。
建築に携わる職人達にはこんなふうに声をかけていたそうです。
「神は完成を急がない。諸君、明日は今日より良い仕事をしよう」。
なんと温かい励ましでしょうか。
サグラダファミリアの完成まで、まだ少し時間がかかりますが、ガウディは天国で、今日よりも明日、明日よりも明後日・・・と少しずつ積み上げられていく仕事にこめられる「まごころ」を優しく見守っていることでしょう。
文・中村幸代