相手は鏡
2018.3
文:中村幸代
この春5年生になる娘の塾のガイダンスに行ってきました。先生は、偏差値60以上を目指すと宣言なさり、塾の授業時間もぐんと増えます。果たして、我が子はついていけるのだろうか、、、。母親の私が受験するわけではないのに、なんとも重たい気持ちになりました。
娘は算数の難しい問題を面白がって解くなんてこともないし、特別本が好きなわけでもない。世界の国旗や日本の地図にも興味がなく、理科の教科書に出てくる昆虫は大嫌い。宿題もためてしまって毎回帳尻合わせが大変。塾に通うこと自体が間違いなのか。もっと心配なのは、私が勉強しようと言えば言うほど、彼女はヘソを曲げてふてくされてしまい、部屋の隅っこで体育座りをして、不機嫌に生産性のない時間を過ごしている。でも、塾で自らの可能性を伸ばせるとしたら、その可能性を信じたいとも思います。
悶々とする中、あることに気付きました。娘はやはり勉強は好きではない。けれど、絵を楽しそうに描いたり、オシャレに夢中になったり、ふと、他人の立場に立って思いやりのある言葉を発したりすることができる面もある。そうか。その良さを活かして世の中のお役にたてたなら、それが彼女にとっての幸せなんじゃないか。ただ偏差値が上がればいい人生が開けるのではないか、という漠然とした理由で"勉強しなさい"と言っても通じないよね。そんな気付きを得て帰宅すると、思いもかけず、娘は自分から進んで教科書を開いて勉強をしていました。こんな不思議なことがあるんだ!自分の心のありようを変えると、相手も変わる。まさに“相手は鏡”ということでしょうか。
文・中村幸代