TopicsEssay

戌年に思うこと

2018.2
文:中村幸代 


2018年は戌年。ワンちゃんを飼っている方も多いことでしょう。
私が初めて犬を飼ったのは、小学生の時。学校からの帰り道に首輪をしていない子犬を見つけて抱いて帰り、反対する親を泣きながら説得してようやく飼えることになりました。おとなしくて、かわいい女の子の雑種犬だったけれど、時々、遠くを見つめて考え事をするような仕草をするので、その横顔が妙に大人っぽいなぁと感じたことを覚えています。
夏休みのある日、遊びに来ていた親戚の子供が門を開けっぱなしにしてしまった隙に、外へ飛び出し、車に跳ねられて死んでしまいました。本当は、他に帰りたい場所があったのかもしれないな。とても会いたい、大好きな誰かがいたのかもしれないな。そう思うと可哀想なことをしたと思います。

その後は、2代目3代目と、保健所から捨て犬をもらって飼いました。2代目の犬を飼った時に私は中学生で、学校は荒れてイジメが多発。とても精神的につらい時でした。誰にも言えない胸の内を、その犬はわかってくれていたと今も信じています。私が泣くたびに側にいて、顔をなめてくれました。数年後、私が高校へ入学し、楽しい学校生活を送れるようになった頃、その犬は亡くなりました。『もう大丈夫だね』そう言ってくれた気がします。

人と人の出会いも奇跡のような確率ですが、飼い犬とのそれもやはり奇跡。犬たちが私にくれた、純粋で無条件な信頼と愛情と優しさは、いまでも私の心にあたたかい光を灯してくれています。

文・中村幸代







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