ストレスフリーで過ごしたい

毎日の生活の中で、多かれ少なかれストレスを感じることがありますよね。ですが、人によってストレスを溜めこんでしまう人と、そうでもない人がいます。その違いのひとつに、レジリエンスの高さが関係しているのをご存知でしょうか。今回は、ストレス耐性を強くするためのお守りとなる、レジリエンスの高め方についてご紹介します。

ストレスや逆境に強くなるためには、レジリエンスを高めるのが鍵

レジリエンスとは、ストレスによって受けたゆがみを元に戻す力のことをいい、心理学的にはストレスからの心の回復力、自己治癒力とも言われています。レジリエンスを高めることで、心の回復だけでなく、逆境や困難に順応していく適応力も身につくため、鍛えておくとストレスを溜めにくくなります。レジリエンスを高めるためには、逆にレジリエンスを弱めてしまう面を知ることも大切です。そのためのキーワードが3つあります。それは、①「思考」②「行動」③「感情」です。まずはこの3つについて知ることから始めましょう。

➀思考:自分の考え方の癖を理解して、新しい視点をもつ

同じ出来事に対しても、人によって受け止め方や捉え方は違います。例えば何かトラブルが起きた時。どんな状況であったにせよ、いつでも自分のせいにしてしまう人や、その反対にいつも相手のせいにする人がいますが、これはどちらもストレスが溜まりやすいです。それ以外にも、誰かのせいにすることはないものの、環境や状況のせいにばかりして「自分にはどうすることもできない」と、問題が起きた時に目を背けてしまう人。このような人は一見ストレスフリーにも見えますが、実はこれは現実的な問題解決には繋がりません。
そこでみなさんにおすすめしたいのが、「最善主義」という考え方です。最善主義は、完璧主義とよく比較される言葉なのですが、次のような違いがあります。

完璧主義
・仕事のミスや失敗は許されないと思い込む。
・何より結果を大事にする。
・ネガティブな感情に着目してしまい、いつまでも落ち込んでしまう。

最善主義
・仕事でのミスは人間である以上仕方がない。むしろ成功のためにはそれも必要と考える。
・結果だけを見ずに、その過程を大事にする。
・自分で操作ができず、考えてもしかたのないことにいつまでも悩まない。
・自分ができることの制約や限界を受け入れ、「今なにができるのか」を大事にする。


最善主義と完璧主義の一番の大きな違いは、「現実を受け入れられるかどうか」です。もちろん仕事でのミスや失敗はできるだけ避けるべきですが、人間というのは「絶対に失敗してはいけない」と思い込む程、失敗してしまう生き物です。ならばいっそ、「人間はどうしたって失敗してしまうものなんだ」とそのままの現実を受け入れる。その方が、前向きに行動することができ、かつ実際のミスも減りやすいため、自分の心にとっても取り組んでいる仕事に対してもプラスになります。


➁行動:ストレス解消方法やライフスタイルを見直して、行動から変えていく

日常生活の中での食事の偏りや運動不足、睡眠不足などはストレス耐性を低下させる原因になります。また、ストレス発散のために行動したことが、結果的にストレスに繋がってしまうこともあります。例えば、暴飲暴食やギャンブル、限度を越えたショッピングなど。こうしたことも、適度に行う分にはストレス発散になりますが、度を越えるとアドレナリンという脳内の興奮物質が出過ぎてしまうことがあります。そうすると、その瞬間は快感を得られたとしても、後々後悔して余計に落ち込み、更なるストレスに繋がります。こうした負のスパイラルに陥らないためにも、「ゆったりとした深い呼吸をする」「軽い運動」「自然に触れる」など、科学的にも効果が認められているストレス解消法を試してみてはいかがでしょう。


➂感情:自分自身に思いやりを持ち、あらゆる感情をそのまま受け入れる

人間は感情の生き物ですから、時にはショックを受けて落ち込んだり、怒りの感情がわいたりもするでしょう。こういった感情をなんらかのかたちで日頃から小出しにできたり、表現できている人はレジリエンスが弱まることは少ないかもしれません。ですがその一方で、こうしたネガティブな感情を抑え込んだり、否定したり、蓋をしてしまう人もいます。こうした状態を続けると、自分の感情に気がつきにくくなり、ある日突然ゆがんだ状態で爆発する可能性があります。例えば、お酒を飲んだ時だけ感情が爆発してしまう、というのも典型的な例です。

自分の感情をコントロールする、といっても、それは、わき上がる感情を否定したり、拒否したり、無理矢理ポジティブに考えることではありません。なぜなら、一旦わいた感情を自分の意思で変えることは難しいからです。それよりも、自分自身が今、この瞬間に感じている感情を理解し、それをそのまま認めて受け入れてあげること。それが、日頃からレジリエンスを高めておくのに必要なことです。例えば、誰かにひどいことを言われて怒りを感じた時に「怒ってはいけない」と思うのではなく、「あー、今私は怒ってるんだなあ。あんなこと言われたら怒っても当然だよね。」と、その感情の良し悪しは判断せずに、そのまま受容すること。それだけで、不思議なことにストレスが溜まりづらくなります。

レジリエンスを高めてストレスフリーで過ごす方法、いかがでしたでしょうか。
一度にやろうとするとかえって疲れてしまうかもしれませんので、自分が出来そうなことから、少しずつ試してみて下さいね。

■取材協力

佐々木愛子さん
株式会社 人財開発研究所 専任カウンセラー

<取得資格>
厚生労働省認可職業技能振興会 ケアストレスカウンセラー
国家資格キャリアコンサルタント
国家検定2級キャリアコンサルティング技能士
東京カウンセリング探求センター会員
国家資格 公認心理師

1988年8月5日生 兵庫県出身 
来談者中心療法や認知行動療法等を基盤に長年、電話相談や対面相談を行う。
コロナ禍以降はZoom等のオンラインカウンセリングにも力を入れている。
また、東京都や埼玉県といった都道府県の職員や、横浜市、新宿区、君津市、武蔵村山市、東久留米市といった市区町村の職員、また民間企業を対象に、キャリアデザインやメンタルヘルス、レジリエンス等の研修も行う。

2023

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