ローリングストックを習慣に。
地震や豪雨などの自然災害が多い日本。備えておくべき防災品はたくさんありますが、最も大事なのが食料品です。非常時のための備蓄というと、保存期間の長い非常食を備えておき、数年に一度入れ替えるというのが主流ですが、備蓄率は2割にも満たないのが現状です。そこで、備蓄食品をもっと身近にとらえたローリングストック方法が提唱されています。備蓄に適した食品の紹介や備蓄量の目安など、実際の防災食の取り入れ方をご紹介します。
デイリーストックアクションとは?
デイリーストックアクションは、「日常的な常温保存可能食品」を一定量ストックしながら食べていこう」という家庭用備蓄推進活動のことです。
大きな災害に見舞われても、よほどのことがない限りは自宅で過ごすことになります。ライフラインが整うまではスーパーへの買い出しも難しくなるため、自宅で備蓄している食品が頼りになります。では、自宅で過ごせる在宅避難時に、押し入れの奥から食べ慣れない乾パンや缶詰を取り出して食べる必要があるでしょうか。また、最近では災害用の非常食セットなども普及しつつありますが、うっかり賞味期限を過ぎてしまうことも。そこでおすすめしたいのが、非常食を準備するのではなく、日ごろから使える常温保存可能食品を備蓄しておき、日常的に使いまわしていくことです。こうした食料があると、非常時でも日常と変わらない美味しい食事ができるため、心の安らぎにも繋がります。
常温保存可能食品は、日常のトラブルにも役立つ!
日常的に常温保存食品を備蓄しておくことは、非常時だけでなく、日常の小さなトラブルの解決にも繋がります。小さなトラブルとは、土砂降りで赤ちゃんを連れてスーパーに行けなくなったり、子供の急な発熱によりスーパーに一緒に連れて行けなくなること、また、残業で遅くなって食事を作る時間がとれないなどの日常で起こりがちなトラブルのことです。こうしたときも常温保存食品の備蓄があれば、「食材が無い!」と焦らずにすみ、とても便利です。
保存食品の取り入れ方
フリーズドライ味噌汁やレトルト惣菜などは備蓄に最適ですが、普段からこれらを全て使って献立を作るのではなく、あと1品何か欲しい時や、食材を買い忘れたときに取り入れるのがおすすめです。「今日は料理をしたくない!」なんていう日の家事サポートに役立てるのも良いでしょう。毎日出来合いのレトルト食品を食べるということではなく、それぞれの生活スタイルに合わせて活用してみてください。
レトルト食品も愛のひとつ
家庭での食事にレトルト食品を取り入れることに対して「気が引けてしまう」、「手間をかけて作るのが愛なのでは?」などと思われる方もいます。ですが、日頃の備えをすることも必要な愛です。災害時にも家族が安心して食べられるものを確保するためにも、普段から備えておきましょう。特に小さな子供に「我慢して食べて!」は通用しません。日常の中で試しておくことは、プチ防災訓練にもなります。
備蓄にぴったりの食品の選び方とは?
デイリーストックにおすすめの食品と、選び方のポイントをご紹介します。食品の種類は大きくわけて2つあります。
➀調理不要ですぐに食べられるもの
(温めたらすぐに、もしくは開封したらすぐ食べられるもの。)
定食をイメージして準備すると分かりやすいです。
(例)
・ごはん(パックごはん)
・おかず(煮物などの惣菜系のレトルト)
・汁物(フリーズドライの味噌汁やスープ) など
②調理が前提のもの
・パスタ(茹でるだけで使える)
・トマトソース(お肉や魚の上からかけて時短できる)
・乾燥野菜(使いたい分だけ使える)
スーパーの乾物コーナーに置いてあります。乾物ミックスにはキャベツやにんじん、ほうれん草などが入っているものなど色々な種類がありますが、とくにキャベツや白菜が入っているものは和食でも洋食でも使えるのでおすすめです。逆にわかめが入っているものは、洋食では使いづらいのであまりおすすめできません。味噌汁用やラーメン用など、用途別に売られていることが多いですが、限定せずに使えます。
・ミックスビーンズ
レタスしかないサラダの時に、トッピングするだけで、見栄えも良くなり栄養価もアップ!トマトソースとの組み合わせもおすすめです。
・カット野菜の水煮(豚汁用、カレー用など)
スーパーでは冷蔵庫に陳列されていますが、常温保存可能なものも多いです。調理の時短にもなるので普段から使えます。
・常温保存できるものを選ぶ
保存食は「常温保存が可能なもの」を揃えるようにしましょう。冷凍品は停電が続いた場合に全てダメになってしまいます。日常生活に取り入れつつ、非常時にも役立つことを考えると常温保存できるものが最も適しています。
・各家庭に合った備蓄食を選ぶ
各家庭の好みや食習慣に合った保存食を揃えておくことが大切です。アレルギーや好き嫌いなどでどうしても食べられない物もあるので、日ごろから食事に取り入れて、家族が食べられるものなのか確認をしておきましょう。
・できるだけ場所をとらないものを選ぶ
備蓄食はプラスチックや紙パック包装のものを選んでおくと、捨てる時にコンパクトになるので便利です。缶詰めや瓶詰めも勿論良いですが、非常時の場合はゴミ収集がしばらく来ないこともあるので、家で保管することになった場合は場所をとります。また、コンパクトに収納できるもののほうが、収納スペースもとりません。例えばラーメンなどの袋麺を3食分揃えようとすると、それだけで結構なスペースが必要になりますが、蕎麦やそうめんのようなまっすぐに収納できるタイプに変えるだけで、スペースが確保できます。家のサイズに合ったものを選ぶようにすると良いですね。
備蓄量の目安
全くストックできていない方は、まずは3日分の食材を揃えてみましょう。慣れてきたら1週間~10日と増やしていきます。
<例>
「レトルトカレー」と「パックごはん」が1食と考えてみる
3日分の場合
1人→9セットが必要
4人家族→9セット×4で36セットも必要になる!
これは野菜も何もついていない状態なので、あくまでも「これくらいの量が必要なんだな」という目安です。これをパスタやレトルトの惣菜、調理が前提のものなどに置き換えて揃えていきます。ストックに慣れてない方は、すぐに食べられるものから揃えてみましょう。慣れてきたら、調理が前提の野菜やソースなどを揃えていけばOK。
備蓄品の保管場所はどこが良い?
キッチンが一番適しています。食材選びのときに、冷蔵庫だけでなく常温保存の棚もチェックできるように、日常的に目につく場所に保存スペースを作るようにするのがコツです。パックごはんなど、把握しやすいものをまとめて保存する場合は別の部屋でも良いですが、おかずを別々のところに入れると把握しきれなくなるのでやめましょう。
おすすめなのは、食材ごとに引き出しの中に整理して入れておくこと。例えば「おかずの列」、「汁物の列」、「パックごはんの列」などを決めて入れておくことで、何があるのかが一目瞭然になります。
また、備蓄食材は減ったら買い足すことを忘れずに。日頃から備蓄食材の棚をチェックし、献立の選択肢に取り入れることが大切です。
常温保存可能食品に対する誤解
常温保存できる食品に対して、「保存料や添加物が多いのでは?」と誤解をされている方がいます。ですが、食品を常温保存可能にしているのは、滅菌や殺菌、パックする技術などが優れているからであって、保存料が入っているからではありません。ただ、どの食品にも言えることですが、添加物などが入っているものといないものがありますので、気になる方は確認しておくと良いでしょう。
<取材協力>
池上紗織 様
デイリーストックアクション実行委員会 委員長
<プロフィール>
健康も美容もまずは自身の体づくりから。
食と健康についての基礎知識と、その中での大豆の役割、そして和食だけにとらわれないソイフード(大豆料理)を学べる講座を毎月開催。また、食品メーカーや学校給食用のソイフードレシピ開発を行っている。
協会から生まれた家庭食料備蓄推進活動 デイリーストックアクション 実行委員長として、備蓄の大切さも発信している。
二児の母として日々奮闘中。
デイリーストックアクション実行委員会