卵のチカラ
取材協力
小林ゴールドエッグ代表
たまごのソムリエ 小林真作さん
卵は手のひらに収まるほどの小さな食材ですが、体に必要な栄養素を豊富に含んでいます。また、いわば宗教レスの食べ物なので、世界中の人が誰でも味わうことができます。今回はそんな卵の魅力を、色々な側面からお届けします。
卵による健康効果
卵はたんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンをバランスよく含んでいる完全栄養食(健康を維持するために必要な栄養を豊富に含む食材のこと)です。ビタミンCと食物繊維以外の栄養素を全て含んでいるので、とても体に良い食材です。卵を食べることで、体に嬉しい健康効果がたくさんあります。
・鬱の防止になる
良質な必須アミノ酸が、体に必要とされる分量含まれています。このアミノ酸の中にはトリプトファンが含まれ、幸せホルモンで知られるセロトニンを作る働きがあります。鬱病はこのセロトニンの不足が一因とされているので、セロトニンを増やす助けをすることで、鬱の防止に効果があります。
・認知症の防止になる
アルツハイマーの人は脳内のコリンが不足しているとも言われています。卵黄には「コリン」がたっぷり含まれているので、認知症の防止になるという見解があります。
・目に良い
・卵黄に多く含まれている「ルテイン」は、加齢で目が見えづらくなるのを防ぐ効果があります。
・卵黄には「コリン」が含まれていて、血中にある脂分などの不純物をきれいに取り除く働きがあります。アミノ酸が血管自体を強くきれいにしてくれるため、血行も良くなります。
・「ビタミンA」が含まれていて、目の粘膜を乾燥から防ぐ効果があります。
卵は1日1個までは迷信
卵はコレステロール値が高いこともあり、「1日1個まで」とよく言われてきましたが、医学的な面で誤りであることが分かっています。体内で作られるコレステロールの量は肝臓が調節をしているため、コレステロールを多く摂ったとしても、体内で作られる量を減少させることができます。そのため、多く食べたからといって体に悪影響を及ぼすわけではありません。昔は国の指標でコレステロールの摂取制限などありましたが、数年前に撤廃されています。今では1日3個まで食べると健康寿命に良いとされています。
作りたい料理に合わせて卵を選ぶ
卵は一見どれも同じように見えますが、卵によって「旨味」・「香り」・「色味」・「食感」が変わります。これは卵を産む鶏によって変わる特徴で、鶏の種類で香りや風味、鶏が食べる餌で色味や旨味、鶏の年齢や鮮度で食感が変わると言われています。卵料理を作るときには、こうした卵の特徴を活かすことで、美味しさの幅をぐっと広げることができます。そのために大事なのが、卵の選び方。卵の色やサイズなど、料理に合わせた卵の選び方を一部ご紹介します。
●赤い卵と白い卵の使い分け
鶏によって産む卵の香りが変わります。これは体に持っている酵素の違いによるもので、エサから摂取した食材の匂いの成分を分解できる鶏(品種改良された鶏)と分解できない鶏(原種に近い鶏)がいるためです。品種改良された鶏は分解酵素をたくさん持っているので、癖のない卵「白い卵」を産む特徴があります。逆に原種に近い鶏は分解酵素をほとんど持っていないので、餌で食べた魚の香りが残っていることが多く、「赤い卵」を産む特徴があります。
・白い卵
→〇癖がないので、バターの香りを活かせる料理(カルボナーラなど)や洋菓子(ケーキなど)に向いてる。
→×シンプルな味付けの料理(目玉焼きなど)はちょっと物足りなく感じやすい。
・赤い卵
→〇卵に香りが残るので、かつおだしや醤油で食べるような卵かけご飯やだし巻き卵などの和食に抜群に合う。
→×洋菓子作りはやや向いていない。
●卵のサイズの使い分け
卵は小さいものほど黄身の割合が多く、大きいものほど白身の割合が多くなります。
・小さい卵に合う料理
→「卵かけご飯」
白身の割合が多いと、味が薄くて物足りなく感じる人もいるため、黄身に旨味があり、白身の少ない小さめの卵が向いています。
→「目玉焼き」
小さい卵は割った際に白身にひっぱられず、黄身が球に近くなりやすいので、目玉焼きにとても向いています。
→「温泉玉子」や「ポーチドエッグ」
新鮮な小さいたまごは粘弾性の数値が高いため、ねっとり感が強くて濃厚な風味を味わえます。
・大きい卵に合う料理
→「オムレツ」や「玉子焼き」、「パン」など
大きい卵は加熱するとふんわりとしやすいので、ふわふわした食感に仕上げたい卵料理に向いています。
*豆知識
・「美肌」、「疲労回復」には「小さい卵」を選ぶとより効果が期待できます。
・「免疫を上げる」にはLサイズや2Lサイズなどの「大きい卵」を買われると良いです。
白身には抗ウイルス作用があり、風邪薬の中にも白身の成分が入っています。
妊娠期間に卵を食べると、赤ちゃんのアレルギー発症率が下がる!?
妊娠期間に卵を多く食べた人ほど、産まれた子供に卵アレルギーが出る確率が少なくなると言われています。また、生後4〜11ヶ月の間に、離乳食で卵を少しでも食べさせておくと、後のアレルギー発症率が40%も低くなることもイギリスの研究で分かっています。妊婦さんのうち2人に1人は根拠なく食物を制限している人がいますが、バランス良く食べていた方が子供のためになります。
もしお子さんが卵アレルギーになってしまっても、8割以上の子は5~6歳ごろになるとアレルギー発症率が下がっていく傾向があるので、不安にならなくて大丈夫です。赤ちゃんの時は消化機能が未熟のため、卵に含まれるアミノ酸をうまく分解することができず、アレルギーを引き起こす物質に変えてしまいます。けれど、成長すると消化機能が成熟し、きちんとアミノ酸まで分解できるようになるので、アレルギーが発症しづらくなります。
(参照:The Journal of the American Medical Association- 2016/09/20)
<取材協力>
小林真作 様
小林ゴールドエッグ 代表取締役
<プロフィール>
徳島県徳島市出身。1975年1月17日生まれ。
名古屋大大学院工学科研究科修了後、大手食品メーカーで製品開発などを担当。2004年に3代目社長として代表取締役に就任。
小林ゴールドエッグ