オーケストラとの初共演を終えて〜後編〜
2018.12
文:中村幸代
初めての世界に飛び込むときには、想像もできない出逢いがあるものですね。だからこそ、不安と期待の両方が心をドキドキさせるのですが。
オーケストラとの初共演を通しての出逢いも色々ありました。
コンサートの司会を務められた、NHKのベテランアナウンサー須磨佳津江さんと出逢えたことも私の宝になりました。
リハーサル中、客席にポツンと座っている私に、須磨さんが「お子さんがいらっしゃるのに作曲のお仕事、大変でしょう?」と、優しくお声をかけてくださったのです。「なんとか周囲の方に助けられながら、させて頂いています」と応えると、「私もね、(仕事を)辞めちゃおうかなと思ったときもあったの。でもこうして細く長く続けてこられたから、今があるのよね。続けてさえいれば、細いものでもいつか太くなる時がくるかもしれないでしょ?でも辞めてしまったら、それっきり」とニッコリ。
ことのほか、そのお話が心に響いたのには理由がありました。オーケストラとの共演という長年の夢が叶う場にいながら、それは経験不足ということを差し引いたとしても、自分の至らなさを直視する厳しい場でもあって、どこか心の奥の方で「私はいつまで、音楽の仕事ができるんだろう」と弱気の虫が顔を出していたからなのです。例え、カッコよく仕事が出来なくても、結果がついてこなくても、ただ『続ける』という素朴な道をひたすらに進んでいくことの素晴らしさを教えてくださった須磨さん。
コンサートをおかげさまで無事に終えられた今、私は新たな気持ちで音楽の勉強を始めています。
文・中村幸代