みりんと甘酒を料理に活用しよう!
自宅でよく使う発酵調味料といえば、醤油や味噌、お酢などが主流ですが、実は出番の少ない「みりん」や「甘酒」も色々な料理に使えることをご存知でしょうか。甘酒が調味料?と驚かれたかもしれませんが、飲み物とは別の顔もあるんです。今回はそんなみりんと甘酒をピックアップして、その魅力をお届けします。
そもそも発酵とは?
発酵とは、大豆や肉、魚、米、麦などに含まれるたんぱく質やでんぷんに微生物が働きかけることにより、旨味成分であるアミノ酸やブドウ糖に分解したり、酵素やアルコールを生み出したりすることを言います。微生物の働きが人にとって良いものであれば「発酵」、害のあるものであれば「腐敗」となります。食材を発酵させると、栄養成分が豊富になるだけでなく、味わいや香りも豊かになる上に保存性も高くなるため、多くのメリットがあります。
「甘酒」
・甘酒の豊富な栄養素
甘酒は酒粕から作られるものと米麹から作られるものがあります。米麹を原料にしているものは、発酵前のお米にはなかった「必須アミノ酸」や「ビタミンB群」が豊富に含まれています。必須アミノ酸は、体を作るために必要な栄養素ですが、体内で作られないものもあるため、食品から摂取する必要があります。また、美容効果が期待できるビタミンB群に加え、善玉菌の餌になる「オリゴ糖」や疲労回復効果のある「ブドウ糖」、腸内環境を整える「食物繊維」も豊富です。様々な健康効果が期待できる甘酒は、自然のエネルギードリンクといえるでしょう。
・砂糖の代わりに甘酒を!
甘酒は飲み物としてだけでなく、調味料として砂糖の代わりに使えることをご存知でしょうか。別に砂糖を避けなくても…と思われるかもしれませんが、砂糖には依存性を高める作用があるため、できるだけ控えるほうが体に良いです。砂糖を摂ると急激に血糖値が上がり、それを下げるためにインスリンが一気に分泌されて血糖値が急低下します。すると、脳がエネルギー不足を空腹と勘違いし、さらに糖分を摂取するように働きかけてしまうのです。
この負のループに陥ってしまうと砂糖から離れられなくなり、体に負担をかけることになります。それに引き換え、甘酒やみりんは低GIと言われ、血糖値の上昇は緩やかです。また、体を冷やしてしまう白砂糖の代わりに体を温める発酵食品をとるというのも有益ですね。甘いものは確かに美味しいですが、まずは日常の料理から砂糖を少しずつ取り除いてみるのがおすすめです。
・甘酒を砂糖として使うコツ
慣れないうちは、甘酒を砂糖の代わりにどう使えばよいのか分からないかもしれませんが、まずは砂糖を使いたい場面で甘酒を入れてみましょう。無糖の豆乳や炭酸で割ったり、珈琲や紅茶に入れたりしてみるのもよいでしょう。
料理に使う場合は、「砂糖大さじ1」=「甘酒2.5倍から3倍ほど」が目安です。ただし、甘酒の糖度にもよっても分量が変わってくるので、味をみながらの調整が必要です。
味の想像がつきにくいかと思いますが、甘酒の優しい甘さに慣れてくると、砂糖のカツーンとした甘さに違和感を覚えるようになってきますよ。
・甘酒を入れると美味しくなる料理
料理に少しまろやかさをだしたいときにも甘酒は活躍します。例えば、オイルとお酢と塩コショウと甘酒を少しいれてドレッシングにしたり、カレーの隠し味として入れるのもおすすめです。また、ミートソースのトマトの酸っぱさが際立つ場合に、甘酒を少しいれると味がまろやかになって美味しくなります。
・選ぶときのポイント
必ず後ろの食品表示を見て「米・米麹」と書いてあるものを選ぶようにしましょう。アルコールが少し入っているものでも構いません。また、塩分が含まれているものといないものがあるので、好みや用途に合わせて買うと良いでしょう。例えば、好みにもよりますが、甘酒を飲み物として欲しいときは塩分がないもの、調味料として使いたいときは塩分が入っているものを選ぶのがおすすめです。
「みりん」
・みりん
今でこそ調味料のイメージが強いみりんですが、昔は甘いお酒として嗜まれていました。調味料として使われ始めたのは江戸時代後期とのこと。当時は砂糖があまりなかったので、代わりにみりんを使っていたという話もあります。
・みりんの種類
一般的に市販されているみりんは大きくわけると2つあります。
本みりん→アルコール度数14%。発酵している。
アルコールの力で麹菌の働きが抑えられ、熟成がゆるやかに進むことで甘味と旨味が生まれる。
みりん風調味料→アルコール度数1%未満。発酵していない。
発酵の複雑な味をだすために添加物を入れ、水あめやブドウ糖などを加えて甘味を出している。
・本みりんの栄養素
本みりんには、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1と、たんぱく質の代謝をあげるビタミンB2が含まれています。また、アンチエイジング効果が期待できるアミノ酸に加え、貧血予防になる銅も含まれています。
・「煮切りみりん」を作って砂糖の代わりに
みりんを砂糖の代わりとして使う場合は、一度アルコールを飛ばして「煮切りみりん」にする必要があります。作り方は簡単。深めの耐熱ガラスにみりんを100CC入れて、600Wのレンジ で4分ほど温めて完成です。(※爆発するのでラップはしません。)大量に作りたいときは、みりんをお鍋に入れてフツフツするまで煮込んだら完成。冷蔵庫で保存し、一週間以内に消費しましょう。料理に使う場合、「砂糖大さじ1」=「煮切りみりん」1.5倍から2倍くらいが目安です。
・煮切りみりんを使ったおすすめのドリンク
煮切りみりんは濃厚な風味と甘味が残るので、ドリンクに入れると上品な甘味とコクを楽しむことができます。おすすめの飲み方を2つご紹介しますね。夏は煮切りみりんとレモン、炭酸水を混ぜたものに少し生姜を入れたドリンクがおすすめです。冬は温めたミルクに少し煮切りみりんを垂らしてみてください。ほんのりとした甘さが口に広がって、心がほっとしますよ。
<取材協力>
オレガン愛美さん
日本発酵文化協会 発酵マイスター、発酵プロフェッショナル
激務で体調不良に陥り、キャリアブレイクに入ったのをきっかけに日本の発酵食品文化の勉強を始め、麹のすばらしさに魅せられる。長年の海外生活を生かし、2019年、【麹をもっと洋食に】をテーマに起業。麹が引き出すうまみを利用した無添加の調味料の開発、販売、およびワークショップなどを通し、麹の活用を現代食に広げるべく活動中。
■atelier de koji