TopicsEssay

成功のかげに

2019.9

green cafe vol.95 「 成功のかげに」

大人が子供に繰り返し「頑張れ!努力しなさい!」と言うのは、子どもが将来、世の中において成功してほしいからに他なりません。
「努力なくして成功は無し」と誰もが言いますが、最近つくづく思うのです。努力とともに多かれ少なかれ、必ず誰かの助けや後押しがあって初めて「成功」が成り立つのだと。その誰かは、家族かもしれないし、師匠や上司かもしれないし、友人や同僚、あるいは尊敬する人の生き様かもしれない。それは「出逢い」そのものであって「誰に出逢えるか」「何に出逢えるか」それがとても大きな影響を与えると思うのです。

私が若い頃は「努力は自分を裏切らない」という信念だけで突っ走っていたので、ベクトルは全て自分に向いていました。だから、ちっとも周りが見えていなかった。もっと一回一回の出逢いを大切にできる自分だったら、もっと周囲の支えに気付いて感謝できる自分だったら、きっと今とは違う自分になれていたかもしれない。そんな風に後悔するときもあります。でも考えてみれば、世の中で成功する云々より前に、「こうして今日もご飯が食べられて、屋根の下で空調の効いた部屋で眠ることができる」、それ自体が世の中に支えられていることなのだから、感謝しなければいけませんね。

「自分が働いて得たお金で生活できるのは、自分が努力したからだ」と思っていた若い頃の自分に言いたい。「世の中のたくさんの人の努力や思いやり、いろいろな恵みに支えられて、初めて自分が生きて、努力することも出来るんだよ」と。
世の中で成功するということは、功績が認められるとか、有名になるとか、良い職に就くとか、そういう結果だけを言うのではなくて、様々な出逢いや目に見えない支えに感謝できる「心の目」を持って、自らも誰かの支えになっていこうと努められることなのだろうと、最近そんなことを思うのです。

文・中村幸代

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