「食育のきほん。」



新しい環境を楽しむ

取材協力…NPO日本食育インストラクター 廣瀬弘子さん

食の問題が増えてから、よく耳にするようになった「食育」という言葉。実際にはどんな教えのことなのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。食育の概念は子育て世代の方だけでなく、日ごろの食生活においても役立つことばかりです。今号ではそんな食育について一緒にひも解いていきましょう。

■食育とは?
食育とは、食事や食べ物に関する知識と選択力を身につけて、団らんの食卓から心も体も豊かに健全な生活を送れるようにするための教育のこと。今から12年ほど前、こうした教育を広めるために「食育基本法」が施行されました。この法律ができた背景には、孤食の増加や栄養の偏り、廃棄食材の多さなど、食にまつわる問題が多くありました。これらを解決するために、幼少期のうちから「食」について知り、考えるきっかけを作ろうという動きが広がるようになったのです。

■6つの「こ」食が子供たちに与える影響
子供たちを健康に育てるうえで、いま問題になっているのが、6つの「こ」食と言われています。

①一人で食べる「孤食」
②同じ食卓を囲みながらも、個人がバラバラのものを食べる「個食」
③粉ものばかり食べる「粉食」
③同じものばかり食べる「固食」
⑤濃い味付けの「濃食」
⑥ダイエットを気にした少なめの「小食」

食事は一日に3回、1年間だと1095回にもなるため、食事の内容次第で体の健康状態が大きく左右されます。また、食事は体だけでなく、心の栄養にも深く関係するため、これらの「こ」食を続けていると、心と体に悪影響を及ぼす可能性があります。このいずれかの項目に当てはまる方は、食生活を見直してみましょう。

■食育の大きな3つの柱
① 「安心」「安全」「健康」の選食能力を養う
食事はなんといってもバランスが大切。食事バランスを考えるための参考になるのが、農林水産省が提供している「食事バランスガイド」。一日に摂取すべき分量をコマのイラストで表現しています。
単位はSVと言い、1SV=“そのひとの片手にのる量”が目安です。
手のひらのサイズは人によって異なるので、当然とるべき分量も様々です。

※食事バランスガイドのイラスト入れる予定です。
・主食5~7
・副菜(野菜中心のおかず)5~6
・主菜(たんぱく質)3~5
・牛乳・乳製品2
・果物2

コマの軸-水やお茶など。食事の間の水分摂取も大切です。
コマのヒモ-食事の楽しみであるお菓子やお酒のこと。しかし、ヒモなので食べすぎや飲みすぎてはいけません。
コマをまわすために必要な適度な運動も重要です。コマはバランスが悪くなると倒れてしまうので、食事と運動の両方を大切にしましょう。そして生命力溢れる旬の食材を食べることも忘れずに。

② 衣食住の伝承、しつけは共食から
誰かと目を合わせながら話をして一緒に食事をすると、幸せホルモンである「オキシトシン」がでて、楽しい気持ちになります。最近では、食事中にスマホを使う人もいますが、アイコンタクトがなくなってしまうと、心と心の交流は止まってしまいます。とくに、お母さんが授乳中にスマホを見ていると、子供は自分よりもスマホが大事であると認識してしまうのです。
また、食事中のテレビはできるだけ避けるのがベター。親子共に忙しい時代で、会話の時間が唯一夕食だけということも。そのときにテレビがついていると、会話が減り、楽しい団らんの時間が持てないことに加え、子供が向けた相談したいことがあるや元気がないなどのサインに気が付きにくくなる可能性があります。又、しつけは一生の宝物。食事中に箸の持ち方や食べ物を大切にすることなど、食卓で繰り返し伝えるようにしましょう。

③ 食糧問題やエコロジーなど地球の食を考える
日本は工業化や食の欧米化が進むにつれて食料自給率が低下しました。今では食品の6割(カロリーベース)を輸入に頼っていますが、一方で世界一食料廃棄の多い国という現状があります。食品ロスは621万トン。世界の食料援助よりもずっと多い量を廃棄していることになります。わたしたちにできることは、家庭内の食品廃棄量を減らすこと。自分の食べる量を知って調理することが、食品ロスをなくすことに繋がります。そのためにはまず、1週間に一度は冷蔵庫の中を見て、余っているものを確認しましょう。そのうえで献立を考えてから買い物へ行くようにすると、余計なものも買わずにすみます。また、使う野菜もできるだけ捨てる部分をなくすような工夫をしましょう。大根ひとつとっても、芯のところは夕食のおでん、皮は翌朝のお味噌汁、葉っぱの部分はお浸しやふりかけなどに使えば、大根の栄養をまるまる摂れるうえに、食品のロスも減らすことができます。こうした「もったいない」という気持ちを子供達に伝えていきましょう。

■理想の食卓は簡単に作れる
料理のジャンルは様々ありますが、わたしたち日本人はルーツである和食を食べるのが、体にとって最も好ましいとされています。この和食を作る上で大切にされているのが「五味五色五法」です。

五味…甘味(エネルギ―)、うま味(アミノ酸)、塩味(ミネラル)、酸味(発酵)、苦味(毒)
五色…赤(肉など)、緑(野菜)、黄色(卵類)、白(穀類)、黒(海藻類)
五法…煮る、焼く、蒸す、揚げる、生食

これらを意識して食事を組み立てるのが理想ですが、難しく考える必要はありません。基本は「ご飯」と「汁」、たんぱく質である肉や魚の「一汁一菜」です。あとは簡単なおひたしや果物があれば充分。汁には旬のものを具沢山に入れるようにすると、出汁からでるうま味、野菜のビタミンや、海藻のミネラル、具や味噌のタンパク質などを凝縮していただくことができます。最近では世の中が簡単調理にシフトしていますが、料理を作るにはある程度の時間がどうしてもかかります。けれど、その分おいしさや満足感も得られるので、料理をする30分間だけでも「美味しくなれ~」という気持ちを込めて作ってみましょう。毎回食事を作ろうとしなくても、作り置きをしたり冷凍をしたりして、賢く美味しく健康的な食生活を送れると良いですね。

2023

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