「一日の始まりは睡眠から」
取材協力・・・快眠セラピスト 三橋美穂さん
毎日の睡眠に満足できていますか?忙しい日が続くと、睡眠がおざなりになってしまうこともあるかもしれませんが、眠りは一日の良いスタートをきる上でとても大切です。睡眠について見つめ直してみませんか。
■良い睡眠とは?
良い睡眠をとるためには、「適度な睡眠時間(長さ)」と「睡眠の質(深さ)」の両方が必要です。また、眠り始めの90分は一晩の睡眠の中で最も深い眠りに達しやすくなるため、寝つきが良いことも大切です。睡眠の後半)は、夢を見ながら記憶を整理する“レム睡眠”が増えていくため、適度な睡眠時間も必要になります。忙しくて時間がとれない人は、睡眠時間が短くなりがちですが、深く眠れば短時間で良いわけではありません。年齢にもよりますが、成人の場合は7時間前後の睡眠をとることが好ましいとされています。
この逆のパターンがあり、睡眠時間を7時間確保できる人でも、寝つきが悪ければ(30分以上かかる)、質が悪く(浅く)なります。その場合は、睡眠時間を減らすと深く眠れるようになり、質が上がります。
■若年層の睡眠時間の低下
平成27年の調査では、睡眠時間が6時間未満の人が成人全体の4割を占めていました。睡眠が不足すると、脳の機能や集中力が低下するため、仕事の生産性も下がり、ミスや事故も増えます。また、病気にもかかりやすくなります。できるだけ最低でも6~7時間は睡眠をとるようにしましょう。
自分がショートスリーパだと勘違いをしている人もいますが、本当のショートスリーパ―はごく少数。無理をして睡眠を短くしているだけの人が多いので、気を付けましょう。
■寝つきの悪さを改善するには?
・体内時計を整える
不規則な生活をしている人は、見直すところから始めましょう。平日は6時起きでも休日は10時に起きるなどして生活リズムを崩すと、体の中で時差ボケが起きます。起きる時間はできるだけ一定にすることが大切です。
・夕方以降のうたた寝に気を付ける
“疲れ=眠り”に繋がるため、夕方以降に睡眠をとると、夜になかなか眠れなくなります。
・眠る前の1~2時間前にお風呂に入る
体温が上がっているときと下がっているときにメリハリがあると、ぐっすり眠れるようになります。就寝時間の1~2時間前にお風呂に入るようにすると、体温が少しあがって、そのあと急激に下がるタイミングで眠くなるので、この仕組みをうまく利用しましょう。額にうっすら汗が出るくらいの入浴が好ましいです。
・お酒の飲み方に気を付ける
お酒を飲むと寝つきは良くなりますが、途中でアルコールが分解されたあとに交感神経が刺激されて目が覚めてしまいます。お酒を飲むときは水も一緒に飲むようにすると、その症状が緩和されます。眠れないからといってお酒を飲むのは逆効果。アルコールの摂取量が次第に増えていき、アルコール依存症に繋がる危険性があるので、他のもので代用する必要があります。
例えば、ノンアルコールビールは睡眠の質を良くするという結果がでています。睡眠の妨げになるアルコールもなく、ビールに含まれているギャバという成分にリラックス効果があるためです。方法を変えても眠れないときは、睡眠の専門医に相談してみましょう。
※この他にも気をつけること
寝る前のブルーライト…スマホやPCのブルーライトは睡眠ホルモンの妨げになります
お酒やタバコ、…カフェインが睡眠の妨げになります
■睡眠負債の上手な返し方
睡眠不足の状態が続き、それが蓄積されて借金のようになっていくことを「睡眠負債」と呼びます。この睡眠負債は早めに返す必要があり、休日に長く寝るときのコツがあります。平日と同じ時間に起きるのが理想的ですが、遅くとも平日の起床時間+2時間までには起きるようにしましょう。そして、太陽の光を浴びて朝ごはんを食べ、体内時計をリセットします。その後、眠い場合は午前中であればいくら寝ても構いません。午前中の睡眠は夜の睡眠に影響することがないからです。最も良くないことは、お休みの前日に夜更かしをして遅く起きること。早寝を心がけて、睡眠の軸がブレないようにすることが大切です。
■人生の始まりは睡眠から
私たちは、眠りにつくとき「疲れた」「やっと眠れる」など、何かしら考えていることが多いものです。睡眠の一番の目的は、その日の疲れをとることではなく、“明日のために眠る”という積極的な目的を持っています。“一日の始まりは睡眠から”ということを意識して、睡眠を大事にするようにしましょう。
また、「寝る子は育つ」というように、本来、睡眠は成長のためのものです。体の成長は20歳くらいがピークですが、心の成長は一生続きます。ベッドに入るときには「明日のために眠る」「成長のために眠る」と意識してみてください。明日の目覚めが変わります。