自然に沿った体づくり~漢方の考えを活かす~
2016.09.01
漢方の考え方は心と身体のバランスに重きをおいて、未病を癒していくもの。
漢方の知恵をかりて自然の流れに沿った快適な身体づくりをしてみませんか。
現代医学と漢方医学の違いとは?
漢方=“漢方薬”と思われがちですが、中国で発展していた自然哲学を基本とした医学体系のことを指します。この医学が日本で独自の発展をとげ、漢方と呼ばれるようになりました。
〈現代医学〉
今起きている症状をすぐに取り除き、悪者を退治する方法。症状に対してピンポイントに効く薬を使う。
〈漢方医学〉
目の前の症状だけでなく、その人自身の体調や体質を診る。その人にあった対処法を導き出すのが特徴。ひとつの症状を抑えるだけでなく、その原因を取り
除き、全体を整える薬を使う。漢方薬だけではなく、ヨガや鍼灸、普段の食事を整えることも、漢方の考えのひとつ。
漢方の基本的な考え方
人の身体の見立て方は現代医学と漢方は異なり、漢方では体を「気」・「血」・「水」の3つから成ると考えます。
気、血、水の意味
気→目には見えないが存在するエネルギー。元気の“気”が巡って生きている。
血→肉体を形作る。物を見るときや考えるときに使う栄養分。
水→体に潤いを与えて、なめらかに体を動かせるような助けをする。
この気・血・水が体にたっぷりと満ちて、うまく巡っていることが漢方では重要視されています。この流れが滞ると様々な不調に繋がることも。
陰陽五行説
漢方は古代中国の自然哲学がベース。“自然の中でどう過ごせば、自分が快適になれるのか”という考え方が医学に発展しました。自然哲学には、「陰陽論」と「五行説」のふたつの理論があり、これを合体させたものが“陰陽五行説”です。
〈陰陽論〉
自然界にあるものを「陰」と「陽」2つのタイプに分ける考え。
- 陰→月、暗い、冷たい、穏やか、クールで冷たい。/女性・女性は家を守る。冷え性/冬
- 陽→明るい、温かい、活動的、太陽のイメージ。/男性・男性は外へ狩りに行く。暑がり。/夏
季節は陽(夏)から陰(冬)へ移り変わり、また陽に戻る。同じように、季節と一緒に自分の体調や気分も陰陽をぐるぐる回ります。この自然の流れを踏まえて、自分が快適に過ごす方法を考えてみると、自分の心に負担がなくなります。自然のリズムに抗わずに、陰陽バランスを整えて過ごすようにしてみましょう。
〈五行説〉
自然界にあるものを「木」「火」「水」「土」「金」の五つの要素に分ける思想で、それぞれが互いに影響し合うという考え。方角や季節、色、味、人の身体の機能などを五行説に当てはめることができます。
- 木→植物のイメージ。大地に根を張り、伸びていく。伸びやかなもの、成長するもの。
- 火→赤く、燃え上がる。熱く燃え滾るもの。
- 土→大地。万物の母。いろいろなものを生み出し、育む。
- 金→クール、きれいなイメージ。バリアを張る。
- 水→潤わせる。清涼で下のほうに流れていくもの。
漢方では、この思想を人間の身体と同じように捉えます。ひとつのパーツを見るのではなく、それがどのように関係していて、今の不調がなぜ起きたのか、その関連性を見出すことを大切にしています。
食養生を取り入れて女性の悩みを解決!
食養生は漢方の知恵。健康的な身体をつくるためには、食べ物の特性を生かした食生活を送ることが基本です。
「冷え」と「疲労」
目に見えない「気」を補うことが大切です。「気」が不足すると血液が生まれず、水も動かせず、温める力が湧いてきません。元気を補うエネルギーを持っている食物は、米やまめ、イモなどの炭水化物。ダイエットで炭水化物を省く人もいますが、時により補うことも必要。量を増やすのではなく、自分に合った質の良いものを選ぶようにしましょう。
月経
女性には「血」の考え方が重要です。血は栄養や潤いを意味しますが、毎月の月経は「血」の流れでもあります。毎月淀んだものを排出してフレッシュなものを作り、肌、髪の毛にも栄養を運ぶ役割があります。きれいな血をたくさん作り、淀まないようすることが大切。漢方では、自然界のものを摂ることが良いとされているので、血と同じ赤色のものを摂るようにしましょう。例えば、トマト、レバー、イチゴや葡萄などのベリー系の果物は血を養います。貧血気味のときはドライフルーツを摂るのがおすすめ。また、黒豆やごま、ひじきなどの黒い食物も、血を養う食材と言われています。
薬日本堂学術部マネージャー 薬剤師 齋藤友香理さん