植物が教えてくれること



2016.04.01

日本の文化や伝統、地球の環境は植物がベースになっています。
関心が薄れている植物にもっと目をむけて、わたしたちを取り巻く問題や、植物とヒトの関係性について一緒に考えてみませんか。


植物が教えてくれる環境の危機

気候変動による農作物の被害

地球温暖化という言葉は、温度の変化だけが問題視されているようなネーミングですが、もっと切実な問題は“雨の降り方の変動”です。最近ではゲリラ豪雨が話題となり、雨が降ることだけが協調されていますが、むしろ“降らない”ことに問題があります。もし日本で空梅雨が2年続いた場合、飲み水や米などの農作物に影響ができます。

世界を見ても、降水量が少ない乾燥地で雨の変動があると、農作物は作れなくなります。いちばん雨に耐えられる農作物は“トウモロコシ”と言われ、年間500ミリの雨量(日本の3分の一)があれば生産できますが、逆に降水量がこれより低下すると厳しくなります。アメリカはトウモロコシの生産地で、日本にも多く輸入されていますが、現在では過去に蓄えた地下水を汲み上げて、なんとか生産している状況です。日本はトウモロコシを年間1500~600万トンほど輸入しています。お米は800万tほどの収穫量がありますが、その倍のトウモロコシを輸入して生活が成り立っているのです。ビールの多くや、卵を産む鶏のエサ、お菓子などでもトウモロコシは多く使われているので、アメリカで雨が降らなくなった場合、日本は輸入できなくなり、値段の高騰も予測されています。

植物の深刻な高齢化

アフリカは雨の不足によって森林の次世代が成育されず、問題になっています。大雨が降らないため、種の周りにある発芽阻害物質という成分が洗い流されず、種が発芽できないのです。
また、発芽しても雨が降り続かなければ、幼い苗の根は深くまで伸びることができず、次の乾燥に耐えられません。地下に水を蓄えている親(成木)は乾燥に耐えられても、子供は発芽せずに終わります。これが高齢化の背景です。

このような植物の高齢化は各地で広がっており、地球の陸地の7、6分の1にあたる15~20憶㏊くらいは砂漠や乾燥化しています。年間でみると、何千㏊も乾燥化が進んでいるのです。人が少し手を加えて次世代を育て、森を守ってあげる必要があります。

日本の気候変動による植物の危機

現在、都市が抱える深刻な問題が“ヒートアイランド化現象”。東京のビルの屋上にはほとんど緑がなく、コンクリートがむき出しになっているため、熱い時は60~70度にまでなります。屋上の熱は下に降りてくるため、余熱によって屋根の下の天井が熱くなり、夜もなかなか冷えません。熱い鉄板のようなコンクリートに敷き詰められた東京の街は、上から見るとまるでコンクリート砂漠です。こうした状況を避けようとして昼に水をまくと、逆にサウナ状態になるので、太陽が沈んでからまくようにしましょう。しかし、雨の降り方が変動してくると、この水も使えなくなります。

この温暖化現象を和らげるためには、植物に頼って屋上を緑化していくことが大切です。とはいえ、全てのビルに芝生を敷き詰めてしまうと、毎日の水やりで消費の水が増えてしまいます。そこで、わずかな水で育つ“多肉植物”を活用しましょう。多肉植物は寒さや乾燥にも強く、管理も楽なため、緑化に最適です。屋上のコンクリートの温度を20度ほど下げることが可能です。

多肉植物のひみつ

夜に気孔を開いて二酸化炭素を取り入れ、夜間に特殊な光合成をします。そのため、開いた気孔から気化熱が奪われ、夜の葉の温度は気温より低くなります。


人間の暮らしを築いた植物「ひょうたん」

ひょうたんは世界最古の栽培植物のひとつ。アフリカが原産で、一万年以上も前から栽培されていました。日本でも最古の植物とされ、縄文時代早期の9600年前にはアフリカから日本に伝わっています。

人間が海を渡って大陸を移動する際に、ひょうたんはある重要な役割を持っていました。それは、“水を入れる器”として重宝されたこと。動物は水場まで行かないと水を飲むことができませんが、人間は動物と違い、水を汲んで貯えて運ぶ能力があります。その能力を活かすためには、密閉性が高く、重さも軽いひょうたんはまさに最適な器でした。この他にも、ひょうたんに水を入れて直接火にかけたり、ひょうたんを切ってそこに焼石を入れたりすることで、“煮炊き”することも出来ました。

ひょうたんは器としてだけでなく、夕顔のような苦味のないものは食糧として天ぷらとして調理されていたり、マラカスのように楽器として使われたりもしています。日本ではあまり認知されていませんが、ひょうたんは奥深い植物なのです。


植物はわたしたちの未来を救ってくれる存在です。
まずは名前から覚えていくと、もっと植物への関心がわくかもしれません。

取材協力・・・農学博士 湯浅浩史さん


2023

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