TopicsEssay

1位でなくても

2017.11
文:中村幸代


子どもの頃から、かけっこが苦手でした。

運動会のかけっこで1位になる人は、ゴールで白いテープを切りますよね。あれが実にうらやましかった。どんな気分なのかな~爽快なんだろうな~と。とうとう一度もテープを切る経験が出来ないままに大人になってしまいました。
娘の小学校の運動会でも80M走という、いわゆる“かけっこ”があり、テープを切ってゴールする子どもたちの姿を、私はまるで小学生の頃に戻ったような眼差しで、眩しくうらやましく眺めていたのでした。

1レース5人。事前にタイムを計り、足の速さが大体同じくらいの子どもが5人ずつ走るのですが、当然のことながら誰かが1位になるのであって、全員が1位になることは、まずできない。そして誰かが5位(最下位)になるのです。

走り終えた子どもたちは、1位の子はこちら、2位の子はこちら、、、と、それぞれ順位が書かれた旗の元へ、6年生のお兄さんお姉さんによって案内されます。あるお兄さんに目が止まりました。走り終えた子どもを、5位の旗へ案内する男の子です。最下位でゴールした子どもの肩に優しく手をかけながら、

「頑張ったね、カッコよかったよ!」そんな風に一人一人、ていねいに旗の元へと案内しているのです。私自身、最下位でゴールする方だったので、5位の子の気持ちがよくわかります。あのお兄さんも、きっとその気持ちがわかるんだろうなあ。
誰もが1位にはなれない~でも5位だからダメなわけでもない。
「良かったよ!頑張ったね!」そう言ってくれる人がいたら、結果はどうであれ、一生懸命頑張った自分を良しとすることができるのではないでしょうか。誰かが言っていましたね。ナンバー ワンより、オンリー ワン。



文・中村幸代




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