お節介
大塚駅で山手線に乗車し、五反田駅へ向かう車内でのこと。車両の中ほどに5才くらいの男の子が座っていました。隣に座っている女性がてっきりお母さんだと思っていましたが、池袋でその女性は下車。新宿で反対側の男性も下車。
「あれ?この男の子ひとり?」お節介ながら私はどう声をかけようかとしきりに考えていました。というのも実際に私の知人の息子さんが、小学校低学年の時に一人で電車に乗ってどこかへ行ってしまい、幸いその男の子に気付いた年配の女性が気を利かせて彼を電車から降ろして駅員さんに預けてくれたので、無事に家族のもとに戻ってこられたという話を聞いていたものですから、これは見て見ぬフリはできないと思ったわけです。車内はまあまあ混んでいて、渋谷では更に人の乗り降りが激しくなりました。
よし、そろそろ声をかけてみよう、なるべく怖がらせないように「ねえねえ、ひとりで乗ってるのかなぁ?」と、私の年齢に合わない高く細い声を無理やり出して話しかけてみると、それまで電車を満喫していた男の子の顔色が一変し、全身に力がピーンと入っていきなり立ち上がって車両の端に向かって走り出して行ってしまいました。そんなに怖かった?そしてチラッと男の子の方を見ると、ベビーカーに手を置く若いお母さんのもとでこちらを睨みつけていました。「なんだ。お母さん乗ってた。」私の取り越し苦労で終了。怖がらせちゃって悪かったな。
でもお節介な人も世の中に必要だと思いませんか?他人に無関心すぎる世の中じゃ、さみしいですもの。
文 中村幸代