気候の変化×心のふしぎな関係

「My Favorite Things」は、いま、話題にしたい人・もの・コトをシンガーの澤由紀江がご紹介させていただきます。

今回は「気候の変化とメンタルヘルス」についてのお話です。

気候の変化×心のふしぎな関係

厳しい残暑もまもなく終わり、過ごしやすい季節へと向かうこの頃。地球温暖化や異常気象のニュースを目にするたびに、なんとなく心がざわつくという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は今、気候変動は暮らしだけでなく、私たちの「心」にも影響を及ぼすことがわかってきています。今回は、気候変動とメンタルヘルスの関係、そして季節の変わり目に心をいたわるヒントをご紹介します。

その不安、気候のせいかもしれません

私たちは「気候変動」というと、熱中症や豪雨、農作物への影響など、暮らしへの変化を思い浮かべることが多いかもしれません。しかし近年、世界保健機関・WHOでは、気候変動は心の健康にも影響を与える可能性があるとして、メンタルヘルスとの関係にも注目しています。

実は、気候変動とメンタルヘルスの関係が本格的に研究されるようになったのは、ここ20年ほどのこと。それまでは大気汚染などが体へ与える影響が主な研究対象でしたが、近年は「気候の変化が人の心にも影響を及ぼすのではないか」という研究が世界中で進められています。

例えば、暑い日が続くと夜ぐっすり眠れず、疲れが取れない、なんていうことはありませんか? 暑さそのものが体にとって大きなストレスとなり、自律神経が働き続けると、心も体も疲れやすくなります。その結果、集中力が落ちたり、気持ちに余裕がなくなったり、いつもよりイライラしやすくなることもあるのです。

また、大雨や台風などの災害があったときに、被災した方だけでなく、繰り返し流れるニュースを見て、不安な気持ちになる方も少なくありません。災害によって住み慣れた家や風景が変わったり、大切な人と離れて暮らさなければならなくなったりすると、喪失感や孤独感を抱えることもあります。

WHOでは、気候変動が心に与える影響は、一つの出来事ではなく、さまざまな要因が重なって起こると考えています。暑さによる睡眠不足や体の疲れ、災害への不安、生活環境の変化、将来への心配などが積み重なり、心の負担が大きくなる可能性があるというのです。

「エコ不安」って知っていますか?

最近では、「エコ不安」という言葉も使われるようになりました。これは、地球環境の未来を思うあまり、不安や無力感を抱えてしまう状態を表す言葉です。「子どもや孫の時代は大丈夫だろうか」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。環境問題への関心が高い人ほど、このような気持ちを抱きやすいともいわれています。

しかし、このような不安を感じることは決して特別なことではありません。自然や未来を大切に思うからこそ生まれる感情でもあります。大切なのは、その気持ちを一人で抱え込まないことです。

WHOは、災害への備えとして、水や食料だけでなく「心の備え」も大切だと呼びかけています。困ったときに相談できる人や安心して話せる場所があること、地域で声を掛け合えること。そうした人とのつながりは、心を守る大きな支えになります。

もちろん、私たち一人ひとりが地球規模の気候変動をすぐに変えることはできません。でも、自分の心をいたわることは今日から始められます。ニュースから少し離れ、深呼吸をすること。朝や夕方の涼しい時間に散歩をして、秋の風や空の高さ、虫の音に耳を澄ませてみること。そんな小さな時間が、自律神経を整え、張りつめた心をほっと緩めてくれるでしょう。

気候変動を考えることは、地球の未来を考えること。そして同時に、自分自身の心と体を大切にすることでもあります。今年の秋は、季節の移ろいをゆっくり感じながら、ご自身の心にも「お疲れさま」と声をかけてあげてくださいね。